控 訴 状
平成21年6月12日
福岡高等裁判所 御中
〒861-2105 熊本市秋津町秋田3442-40
(送達場所) 控 訴 人 佐 藤 上
電 話 096-365-6218
FAX 096-365-6218
〒861-2105 熊本市秋津町秋田****-**
控 訴 人 * * * *
〒861-8601 熊本市手取本町1-1
被控訴人 熊本市
上記代表者 熊本市長
幸 山 政 史
処分行政庁 熊本市建築主事
* * * *
建築確認処分取消請求控訴事件
訴訟物の価格 算定不能
貼用印紙額 19,500円
右当事者間の熊本地方裁判所平成20年(行ウ)第9号建築確認処分取消請求事件
について,平成21年5月29日同裁判所において判決言渡しがあり,第一審原告で
ある控訴人らは同日判決正本の送達を受けたが,同判決は不服であるので,次のとお
り控訴を提起する。
第1 原判決の表示
主 文
1 本件訴えをいずれも却下する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第2 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 熊本市建築主事****が,平成19年7月20日付第******-*号を
もって株式会社*********************に対してなした建
築確認処分を取り消す。
3 訴訟費用は第一審,第二審とも被控訴人の負担とする。
との判決を求める。
第3 控訴の理由
原判決において,裁判所は第一審原告らを原告適格を有するものと認めず,訴
えを不適法として却下した。しかし,次のとおり原判決は不当であり,取り消さ
れるべきである。
1 本件開発区域である秋津レークタウンの都市計画法上の開発許可の付加条件と
して,熊本県知事は「建築協定及び緑化協定を速やかに締結すること。内容に当
たっては本職と協議をすること。」と定めている。これらは熊本県あるいは熊本
市の制定した条例に定める「市街化調整区域の許可基準(県)」,「市街化調整区
域内における大規模開発行為の取り扱い方針(市)」に基づくものであり(行政
手続法に基づき公にされた審査基準でもある。),開発工事の完了公告後に適用さ
れる同区域における建築基準が同協定に含まれている。
2 このことは,秋津レークタウン建築協定が,建築基準法の規制に上乗せして居
住環境等を高度に維持しようとする,一般的な市街化区域での建築協定の性格で
はなく,国土交通省の開発許可運用指針(国総民第9号平成13年5月2日国土
交通省総合政策局長通知)に鑑みて,他の市街地から地理的に離れ,独立した市
街化調整区域内の20ヘクタール以上の住宅の用に供する目的で行われる大規模
開発においては,①(都市計画法第41条関連)都市計画上,その区域の秩序あ
る整備を図るために「建築物の形態制限」を,また ②(同法第42条関連)区
域内の住民の居住環境,公益的施設の確保・保持のために「予定建築物の用途,
位置」を建築協定に定めさせ(開発許可当初は開発行為者の一人協定であった。),
これを第三者効によって将来的にも担保させるというものである。いわば県知事
は,市街化調整区域に新しく独立した住宅地が誕生するに当たって,既成の制約
された法制度の中でもこれに相応しい建築規制のしくみを採用したものであると
解される(平成8年4月1日をもって,当該開発許可権限は熊本県知事から熊本
市長に移行した。また現今,本事案のような開発計画においては,建築協定より
も,地区計画を策定し条例に定めるとの法整備が施されている。)。
3 したがって,建築主事のする建築確認における建築基準法令の適合審査には,
都市計画法第29条,第41条2項,第42条に関連して,秋津レークタウン建
築協定の内容のうち(同協定が直接建築基準法の定める建築基準法令には含まれ
ていなくても,同区域に有効な建築基準は同協定に定められているのであるから
必然的に),建築物の建ぺい率,容積率等の形態制限のほか,土地用途の適合性
についても,実質審査をしなければならない。この点について,被控訴人は「建
築協定は,あくまで私人間の一種の契約であって,その内容は建築基準法の規制
対象ではなく,また,建築確認の対象法令である建築基準関係規定にも該当しな
い。」と主張し,実際にも特に本件建物の土地用途の適合性について審査をして
いない。しかし,秋津レークタウン建築協定は右1~2に挙げたように,市街化
調整区域の開発許可にあたり,県知事が許可の前提となる義務的条件として定め
た許可基準であるから,行政たる被控訴人は同協定が遵守されるよう審査すべき
であって,あまつさえもこれを曲解し,飲食店群建築物の建築を企図した訴外会
社建築主に対して「建築協定に違反する建築物であっても地域の自治会長の同意
書があれば,例外的に建築可能である。」との違法な指導をしてはならなかった
のである。
4 建築確認処分について規定する建築基準法は,建築物の敷地,構造,設備及び
用途に関する最低の基準を定めて,国民の生命,健康及び財産の保護を図り,も
って公共の福祉の増進に資することを目的とし(同法第1条),建築確認につい
ては,建築基準法令その他建築物の敷地,構造又は建築設備に関する法令及び条
例の規定に適合するものであることを要するとしており(同法第6条1項),同
法令には都市計画法第29条1項,第41条2項,第42条も含まれること(建
築基準法施行令第9条12号),さらに同第41条により建ぺい率,容積率等の
建築物の形態制限が定められ,同第42条1項により当該開発許可に係る予定建
築物以外の建築物の建築が規制されていることに照らすと,右各法律は,その趣
旨,目的等から,開発区域内の土地所有者らの所有土地について,関係する建築
確認処分により,直接的に支障を受け,生命及び身体の安全上,また居住環境及
び財産上の被害を受けるおそれがある場合,そのような被害を被らない利益をも,
個別的利益として保護する趣旨を含むものと解される。(平成20年7月31日
大阪高裁「開発許可差止・建築確認処分差止請求控訴事件」平成20年〔行コ〕
第11号,判決差戻し。以下,「平成20年大阪高裁判決」という。)
5 (裁判所の「開発許可制度」の理解について)開発許可制度は,1960年代
以降,大都市周辺部において無秩序に市街地が拡散し,公共施設等を欠いた不良
市街地が次々と形成されてきたこと(スプロール現象)を受けて,都市計画法に,
計画的に市街化を図るべき「市街化区域」とそれを抑制すべき「市街化調整区域」
との区別を設け,その線引きを具体的に担保するために創設された制度である。
そのため,開発許可の要件も市街化区域と市街化調整区域とで区別され,(ア) 市
街化区域の場合には,都市計画法第33条に定めるいわゆる「技術基準」に適合
すれば,都道府県知事は「開発許可をしなければならない」のに対し,(イ) 市街
化調整区域の場合には,同「技術基準」に加え同34条のいわゆる「立地基準」
が加重され,同「立地基準」各号の定めるところ,このいずれかに適合しなけれ
ば,都道府県知事は「開発許可をしてはならない」とされている。
この二つの開発許可の性質について,市街化区域における開発許可が「建築の
自由」を前提とした一般的禁止の解除(講学上の許可)であることについては一
般的に争いはないが,市街化調整区域における開発許可については,概ね次の三
説に分かれている。① 行政実務は,市街化調整区域における開発許可について,
同法34条各号のいずれかに適合する場合には「開発許可をしてはならない」と
いう拘束はもはや働かず,同33条の「開発許可をしなければならない」という
拘束のみが働くと解する。したがって,市街化調整区域における開発許可も市街
化区域におけるそれと一体的に,講学上の許可と解されることになる(許可説)。
② 学説では,両者の開発許可に何らかの質的差異を見い出す見解が一般的であ
る。すなわち,市街化区域における開発抑制の趣旨や同34条の「開発許可をし
てはならない」という文言から,市街化調整区域では「建築の自由」を前提とす
ることはできず,むしろそこでの開発許可は計画的な配慮や利害調整の結果によ
って例外的に認められるものであり,その許否判断には行政庁に裁量が認められ
るとされる。かくして,市街化調整区域における開発許可は,講学上の許可と特
許の中間に位置する「計画許可」ないし「調整許可」として捉えられる(計画許
可説)。 ③ 学説の中にはさらに,市街化調整区域における(特に20ヘクター
ル以上,または条例により5ヘクタール以上の大規模な)開発許可は特許類似の
設権的性格をもつとする見解がある。すなわち,開発許可を得た者自らが公共施
設の整備を行う等,市街化調整区域における開発許可は公的性格が強いこと,開
発許可を得た地位の承継が認められていること,事実上であれ開発許可は収用権
の設定に近い効果があること等から,開発許可は特許のごとく私権としての「開
発する権利」を設定するものと捉えるのである(特許類似説)。
これらの見解の相違によって,市街化調整区域において開発許可を得た者及び
開発許可の法的効果によりその土地に建築物を建築し,あるいは建築を計画する
者の法的地位の理解も相違することになる。① 許可説及び ② 計画許可説によ
る場合,開発許可を受けた者に「開発する権利」が保障されるとは解されない。
他方,③ 特許類似説による場合,上記のように開発許可はそれを受けた者に「開
発する権利」を設定し,かつ開発後にあっては,当該土地の購入者,すなわち建
物の建築主にも開発によって受ける個人的利益である「市街化調整区域に建築物
を建築する権利」が承継され設定されるものとして理解される。右の ③ 特許類
似説を前提とすれば,都市計画法が開発利益を個別的利益として保護する趣旨を
含むのは自明である。平成20年大阪高裁判決は,市街化調整区域における開発
許可の本来の趣旨に照らし,③ 特許類似説を採ったものと解され,原告適格の
範囲を拡大したものとして妥当な判断である。
6 本訴えに係る秋津レークタウンの開発許可に至るまでに,当該区域が既成市街
地から地理的に離れて独立していること,地質が泥湿地であり,かつ直下に布田
川・日奈久活断層が存在すること等のソフト・ハード両面の問題を抱えていたこ
とから,開発許可までに10年以上の歳月を要したこと(昭和49年住宅生協が
土地購入取得,県に事前調整を開始,昭和60年県知事の開発行為許可),そし
て同開発許可条件として「建築協定の締結」が必須に課されたことから(仮に右
5に示す ① 許可説及び ② 計画許可説を前提とするのであれば,許可権者が開
発行為者に同条件を付加して建築制限を課す根拠は存しないから。),結局,秋津
レークタウン開発区域にあっては,③ 特許類似説を採って県知事が特別に住宅
生協になした許可事案であると解すほかないのである(この点,被告は県知事指
定の同条件についての見解を明らかにできていない。)。そうであるならば,原告
らには,開発許可を得た住宅生協の「開発後に,建築物を建築できる」という権
利とこれによって得られる利益を承継し,かつ建築協定という県知事が指定した
特別な法的制限によって保護される利益が存在するのであるから,原告適格を有
すると判断される。または少なくとも同解釈が採用される余地があり,原告らが
同主張をしている以上,同判断を裁判所がしなかったのは不当である。
7 右1~6のとおり,都市計画法及び同法施行令に基づき制定された条例によっ
て定められた許可基準において,「速やかな締結」を義務付けられ定められた建
築協定が,所管を同じくする行政庁の建築確認の処分によって,事実上破られる
こととなる場合には,建築基準法に基づく建築協定の目的として定められた居住
環境及び財産上の被害を受け,またはそのおそれがあるから,秋津レークタウン
の土地所有者,協定締結者であり,適法な手続きにより建築審査請求を申立て,
訴えを提起した控訴人らは,当該建築物の工事が完了するまでの間,すなわち訴
えの利益が存する間に,個別に当該建築物の建築に係る法的効果を与える建築確
認処分の取消を請求する原告適格を有する。原判決においては,控訴人らが審査
請求を申立てた当初から一貫して主張している右「建築協定」に係る原告適格に
ついて,これを判断することなく「門前払い」の判決をしたもので,不当である。
なお,このように原判決は本件主訴因たる建築協定に係る原告ら主張には,触
れずにおきながら(被告は原告らの「建築協定は知事〔つまり市長〕が指定した
開発許可の絶対前提条件である。」との主張にはまったく反論できていないので
もある。),他方,口頭弁論に際して裁判長が指定した準備書面の提出期日(平成
21年2月23日)に後れて提出(同年3月3日)された被控訴人(被告)の「原
告らは焼鳥屋の被害を主張するが,本件は中華料理店の建築確認である。」とい
う,本件に係る審査請求ないし一審裁判の2年間を通じて一度も述べられなかっ
た被告の唐突な主張部分のみを採用し,原告らの本案前での請求却下の主要な理
由として挙げている。これらは裁判の弁論主義に反し,さらに時機に後れた被告
の同準備書面が提出されるや,審理を当事者に予告なく打ち切った裁判長の訴訟
指揮は極めて不公平であり不信感を禁じ得ない。不当である。
本控訴は,以上の理由により高等裁判所に改めて判断を求めるものである。控
訴人らの主張の詳細については,さらに追って準備書面を提出する。
以 上
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