平成20年(行ウ)第9号 建築確認処分取消請求事件
原 告 佐 藤 上 外5名
被 告 熊本市
準 備 書 面 (2)
平成20年11月12日
熊本地方裁判所民事第2部合議B係 御中
〒861-2105 熊本市秋津町秋田3442-40
(送達場所) 原 告 佐 藤 上
電 話 096-365-6218
FAX 096-365-6218
mail noboru@laketown.pc-door.com
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被告の平成20年10月2日付,「求釈明への回答」は,裁判進行の上で極めて重
要な問題点を含んでいるので,ここで特に原告らの見解(反論)を述べる。
1 原告らの求めた「釈明」の意義について
(1) 原告らは,建築主事が土地用途の適合審査をせずになした本件建築確認はその
ものが違法であること,もしくは,当初建築確認に係る土地の用途(の適法性)
に関する行政の判断・処理に違法があり,これに依拠して建築主事がなした本件
建築確認に瑕疵あることを主張し,行政処分の取消しを求めている。
当初建築確認に係る焼鳥屋部分の新築について,訴外会社建築主の都市計画法
第42条1項ただし書き許可の申請に対して,開発景観課が「許可を要しない」
と即断,回答したとの事実があり,その判断の主な根拠として,昭和63年9月
16日付,建第開第14号で熊本県知事が交付した「開発行為に関する工事の検
査済証」(甲第3号証)に添付された「基準」(以下,「県知事指定の建築制限」
という。)が挙げられている(甲第7号証及び甲15号証)。
そこで,この県知事指定の建築制限の内容は本訴えにおいて極めて重要な争点
となるのであるが,都市計画法第47条に定められた開発登録簿には何ら登録・
記載されておらずこれが属性が不明であるので,裁判に当たって当事者である行
政に同建築制限の法的根拠を明確にするよう釈明を求めたのである。
(2) 原告らが訴状に特記しているように,熊本市が中核市に指定された平成8年4
月1日以降,従前県知事がなした行政行為のうち,なお効力を有し同市が管理す
ることとなったもののすべては,市長がなしたこととみなされる。つまり,右「県
知事指定の建築制限」は「市長指定の建築制限」として扱われるべきものである
から,原告らが求めた釈明(根拠法令の解釈)は,すべて被告の権限と責任で明
確にされなければならない。(係る県知事の権限は既に消滅している。)
しかし被告の釈明は,「県知事が作成,添付したものであるため,これがどの
ような経緯,根拠で添付されたかは明らかではない…都市計画法79条の都市計
画上必要な条件として付したものであろうと思量される。」というのであり,行
政として,原告ら住民及び裁判に対して驚くべき無責任,かつ情けなくも当事者
能力に欠ける対応であると言わざるを得ない。(一方,平成19年12月20日
の開発審査会口頭審理では,処分庁の開発景観課長が「開発許可条件として都市
計画法第41条に基づく制限を附して許可している。」と根拠法令条項は同法第
79条ではなく同第41条である旨を陳述している〔甲第33号証,2頁〕)。
(3) 開発区域では開発許可に当たって,許可申請時の予定建築物の用途,規模,位
置等総合的な検討を加えて,道路,排水施設,公園等の公共施設の技術基準が定
められ,購買施設等の公益的施設と共に適正に設計・配置されている。したがっ
て,予定建築物以外の建築物等が立地されると開発許可制度による規制の効果が
著しく損なわれるので,都市計画法第42条1項により厳しい建築制限が定めら
れているのである。しかし本件において真実,このような曖昧な適用法令,根拠
の明確でない建築制限の解釈を元に,(開発許可制度を吟味する観点を持たず,「居
酒屋くらいあってもいいだろう」〔甲第7号証〕のような安易な恣意的判断で)
本件建物の建築を「許可を要しない」と判断したのであるから,このことのみに
おいても既にその違法性は原告主張のとおり立証されていると言う外ない。
言わずもがなであるが,熊本市においては近くさらに中核市よりも大規模でよ
り行政の力量が要請される政令指定都市への移行を目指しているというのである
から,自己統制の機会としても本裁判への真摯な対応を強く望みたい。
参考: 「指定都市,中核市又は特例市の指定があつた場合における必要な
事項を定める政令(昭和38年1月28日政令第11号)」(抄)
(許可,認可等の効力)
第2条 指定都市の指定があつた場合においては,その指定の際現に効
力を有する都道府県知事又は都道府県の委員会その他の機関(以下「都
道府県知事等」という。)が行つた許可,認可等の処分その他の行為又
は現に都道府県知事等に対して行つている許可,認可等の申請その他の
行為で,指定日以後法律又はこれに基づく政令の規定により当該指定都
市の市長又は指定都市の委員会その他の機関(以下「指定都市の市長等」
という。)が管理し,及び執行することとなる事務に係るものは,指定
日以後においては,当該指定都市の市長等の行つた許可,認可等の処分
その他の行為又は当該指定都市の市長等に対して行つた許可,認可等の
申請その他の行為とみなす。
(中核市についての準用)
第8条 第1条から第3条までの規定は,地方自治法第252条の22
第1項の中核市の指定があつた場合について準用する。
(熊本市は,平成8年4月1日,中核市に指定されている。)
2 本件建物を含むA地区に適用される「建築制限」の原告らの解釈
1 に述べたように,行政が自己のなした判断・処理の法的根拠について無責
任な釈明をしているので,本件建物に適用されている(べき)建築制限の法的根
拠について,原告らの解釈,見解を次のとおり先に主張しておく。
(1) 被告の釈明にある都市計画法第79条は,第6章(雑則)に配置されている。
一般的に法律及び法律に基づく命令等の立案・作成に当たって,主となる「総則」
「通則」等の実体規定に当てはまらない細かな規則,手続き類をまとめて「雑則」
「補則」等の標題を付して後段に配置し定めている。建築物を建築するに際して
国民の権利への制限を直接加える,いわば法律の理念の要を構成する規定を「雑
則」中に配置することはあり得ない。
県知事が同添付書類に記した建ぺい率等に関する制限は,準備書面(1)に挙
げるように建築基準法第3章の集団規定に対応し,建築主事の建築確認における
建築基準関係規定に含まれる。またこれら制限に違反すると都市計画法第81条
の監督処分あるいは建築基準法第7章の罰則規定が適用される重要な規定である
ことからも,県知事指定の建築制限は,都市計画法第79条ではなく基本的に同
法第41条1項に基づく用途地域の定めのない区域における建築物の形態制限の
(県知事,つまり市長の)指定であると解する外ない。
(2) また同法第79条に関しては,国土交通省の「開発許可運用指針」においても,
(Ⅲ-17,法第79条関係)「法第29条の許可には,特に必要がないと認め
る場合を除き,法第79条の規定により,少なくとも,工事施行中の防災措置,
開発行為の適正な施行を確保するため必要な条件並びに当該開発行為を廃止する
場合に工事によって損なわれた公共施設の機能を回復し,及び工事によって生ず
る災害を防止するため必要な条件を具体的に明記して付すことが望ましい。なお,
開発行為の着手の時期,完了の時期その他の都市計画上必要な条件についても,
必要に応じて付すことが望ましい。」として,同条の持つ(違反に対する罰則の
定めもない)「雑則」的属性を明らかにしている。他行政庁の例をみても,開発
工事の時期,工事に際しての注意,手続きの事項,そして「建築協定を締結する
こと」等を定めている。秋津レークタウンの場合でも開発許可時の付加条件(甲
第1号証)が同条の定めに相応しいものとして該当すると解される。
(3) 都市計画法は幾多の改正を経ているが,同法第41条は秋津レークタウンの開
発許可当時(旧法)にもほぼ同文の規定が存在しており,他行政庁の例をみても,
また市内の徳王町等の同様の同法第34条10号イによる大規模開発の区域の例
(甲第5号証)をみてもわかるように,同法第41条1項に基づき用途地域の定
めのない開発区域における建築物の形態制限を定めているのであるから,市内で,
全国でも,唯一秋津レークタウンだけが,同第41条ではなく第79条に基づく
ものとして,建築確認における建築基準関係規定に該当せず,違反に対する罰則
の定めもない…と軽んじて扱われなければならない合理的理由はない。
(4) 秋津レークタウンA地区に適用される県知事指定の建築制限をみると,行政が
直接建築物の用途(店舗,ガソリンスタンド,バス駐停車場,タクシー営業所,
銀行)及び床面積(1,500㎡)を決めつけている。しかし,開発許可に当た
っては,開発許可の申請者,すなわち開発を企図・計画する者が予定建築物の用
途を決めて行政に申請するものであり,同用途を行政が強制指定することは都市
計画法,開発許可制度の理念ではあり得ず,行政のなす命令とは解しがたい。
そうすると,右「店舗…」等の指定は,開発区域において都市計画法第36条
各項の定めにより開発工事が完了したことが公告され,建築主事の建築確認を経
て工事の検査済証が交付され,同建築物が既に合法に建築されているのであるか
ら,開発直後当時,①元々これらの個々の建物についてのみ開発許可に係る予定
建築物として扱われて,この旨を記述したもの,もしくは,②個々に都市計画法
第42条1項ただし書き許可を県知事から得て,この旨を記述したもの,のどち
らかで県知事の権限において処分がなされたものであると解する外ない。
(5) 都市計画法第41条1項による形態制限は,将来の市街化区域への編入に当た
って混乱が生じないように,予め用途地域を想定しこれを先取りする形で建ぺい
率等個々の建築規制を定める趣旨である。秋津レークタウンB地区には「第一種
住居専用地域に建築可能な用途」との想定した用途地域の明記があるが,同A地
区は商業専用エリアとして,これに用途地域を想定せず,右(4) のように個々
の建築物に対する指定,許可によって建築制限を機能させているのであるから,
同法41条及び同法42条1項の定めるところにしたがわなければならない。
これを本件のように,行政が分別なく「第二種中高層住居専用地域」として扱
うと,例えば公益施設を潰して一般住居が建築可能と解釈できる余地が生じ,開
発許可制度が骨抜きになる。正に行政の違法な判断・処理であり暴挙である。
(6) (まとめ) 結局,秋津レークタウンのA地区の建築制限(甲第3号証)の解釈
については,都市計画法第41条1項による建築物の形態制限及び同法第42条
1項の予定建築物に関する制限が適用され,次のようにまとめることができる。
① [建築物の用途,位置,規模]
店舗,ガソリンスタンド,バス駐停車場,タクシー営業所,銀行
(都市計画法第42条1項の開発許可に係る予定建築物,又は同ただし書き
許可を得た建築物である。結局,現況の建築物以外はすべて許可が必要)
② [建ぺい率] 40%以下 (都市計画法第41条1
③ [容積率] 80%以下 項に基づく県知事〔市
④ [外壁後退距離] 道路側面 1.5m以上 長〕指定の建築物の形
隣地境界 1.0m以上 態制限)
以 上
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